目覚めのはざまで
たとえばここに新しい本がある。それを読むのが億劫だ。たとえば書きかけ進行中の小説がある。ストーリーもプロットも概ね頭の中では漠然と出来上がっているのに執筆に手がつかない。たとえば二ヶ月先に本番を迎える芝居の演出がある。やる気をもてない。このような〔症状〕は鬱病としては平均的なものだ。ではそれが何処からくるのか。それがワカラナイということに焦燥するのが鬱病の二重構造といえるものだ。『心的現象論・本論』は〔うつ病〕論へと、昨日ひさしぶりに進んだ。で、よくワカラナカッタのだが、どういう脳の機能なのか今朝起き掛け、まだ半分夢見の状態で、ハッと理解出来た。そこで、今朝のモーニングは本を持ち込んで再読、納得した。ワカラナカッタのは、時間制の了解が「現在→過去」になっているという〔反復〕(キェルケゴールの概念を下敷きに)のところだったのだが、なるほど、簡単に解説するとこういうことだ。いまからやるべきことが(つまり現在の了解が)過去時間として了解される。それがある反復営為でしかナイというような感覚に囚われる。私なりにいいかえれば、「既了感」とでも名付けるべきか。以前50枚の原稿をワープロで書き終わった瞬間、ワープロが故障して、データは消し飛び、最初から書き直さなければならなくなったが、あのときの徒労感覚というもの、まだやってもみない対象をそんなふうに識知するのだ。もちろん、その原因はワカラナイ。だが、手がつけられない理由は理解出来た。これでは何をやっても楽しくなく、やる気が出ない、モチベーションを持てないのもアタリマエである。単なる反復を強いられているのに過ぎないと脳が了解してしまう(現在→過去の時間制)からである。では、どうするか。病的原因はおそらく門外漢の私にはワカラナイだろう。従って没個人的に対処する方法を模索するしかナイ。明日の目覚めには、そんな方法をハッと思いつければいいのだが。
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