感無量寿経・グラン・トリノ
クリント・イーストウッド最後の出演作品となる『グラン・トリノ』、なんとまあテーマはというと、かの有名な新約聖書マタイ福音書22章39節「自分を愛するように汝の隣人を愛せよ」である。(と思うんだけど、たぶん間違いナイ)。映画はそこに始まり、そこに終結する。ただし、イーストウッド監督のいわんとしていることは、何も聖書の伝導ではナイ。合衆国はこの聖書の二つの最高綱領(一つは主なる神を愛することなのだが)の根本にもう一度もどるべきではないかという訴えである。イーストウッド監督のここ数本の作品によって、ことごとくアメリカン・ドリームは解体されたと思っていい。で、それはそれ、私はラストシーンからエンディングにいたる場面で、目頭が潤むどころか、大粒の涙をポロポロと落として泣いてしまった。イーストウッドの俳優としての去り方に感無量になったからだと思う。宝探しやら、ホラーも悪いとはいわないが、イーストウッド監督のオーソドキシィには、深く潔くため息をつくのみだ。
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