ジケイ
久生十蘭『金狼』を読み終える。まるで川島旦那の前期の映画を観ているようで、登場人物のイメージが、そのときの俳優たちに重なってくる。かつての東京。氾濫するルビ。それはともかくとして、コスチュームがいまひとつワカラナイので、ネットのフリマで『服飾事典』を購入した。ただでさへ装束オンチなのに、何を着て男女が登場しているのかが、ワカラナイと、キチンと書き込まれた文章の味が半減してしまう。とはいえ、久生十蘭など読んだら、もう小説は書けなくなるだろうなあという予感は裏切られて、こういうふうのなら私にも書けそうだなという見通し(パースペクティブ)のようなものが沸ふつと過っていき、勇気が出る。『金狼』は戯曲の作法を活かしたもので、余計にそんな気がしたのだろう。同じ出版元の国書刊行会からはこの下旬に『演劇の教科書』という訳書が出版される予定になっている。3780円という高価な本だが、割り勘でビール一杯に支払ってる額と差ほどカワラナイとおもえばたいした値ではナイ。タイトルのジケイはスラング。フランス語かと思えばスラングからオキナンチューのコトバまでルビになってるから久生十蘭の世界はたしかに動画である。
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